Barrelの収録文献が平成22年7月21日に3700件を超えました!
3700件目の文献は,アントレプレナーシップ専攻の近藤公彦先生 による,
近藤, 公彦 (2010) POS情報開示によるチャネル・パートナーシップの構築-コープさっぽろのケース-. 流通研究, 12(4): 3-16でした。
近藤先生にお話を伺いました。
Q:登録3700件目の論文「POS情報開示によるチャネル・パートナーシップの構築 -コープさっぽろのケース-」は,どのような内容ですか?
前半はコープさっぽろの事例分析で、後半はその理論的検討というスタイルの論文です。小売業者にとって、何が、いつ、どこで売れたかを示すPOS(Point of Sales)情報は、取引先との交渉上非常に重要で、交渉を有利に運ぶために、そうした情報は開示しないのが通常です。ところがコープさっぽろは2000年、POS情報をデータベース化して、すべての販売情報を取引先に開示することに踏み切りました。そうすることで、取引先の「知」のレベルを高め、コープさっぽろの商品政策(MD:マーチャンダイジング)に活かすことができる、と判断したからです。これはとても画期的なことです。メーカーや卸売業者は自社の商品だけでなく競合商品の販売情報も見ることができ、その情報を分析して戦略を提案し、コープさっぽろはそれを受けて商品政策を実行することができます。こうしたPOS情報開示の動きは、コープさっぽろ以降、全国に広がり、その数は全体で60以上の小売チェーンにも上っています。
競合他社商品の販売情報をも開示されることによって、競合企業間や取引先とのパワー関係、それに基づくマーケティング行動が変わってくる。こうした革新的な現象を研究することの理論的意義は、とても大きいと感じました。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
コープさっぽろのPOSデータの管理運営を行っているポイントプラスという会社と2年前から共同研究を始めたことがきっかけです。この共同研究を通じて、コープさっぽろのPOS情報開示の事例を深く知ることができ、これは面白いなと思い、研究を始めました。
Q:現在の研究について教えてください。
マーチャンダイジングに関わる論文というのは私にとって新しい研究分野で、神戸大学のグループで研究を進めているところです。私がここ4、5年、研究テーマとして取り組んでいるのはCRM(customer relationship management)という分野です。企業が顧客データを収集・分析し、その行動を把握した上で、どのようにして顧客にアプローチし、長期的な関係を構築していくのかに関心を持っていて、今、『顧客関係のマネジメント』というタイトルで本を書いています。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
今年6月に札幌コンベンションセンターで、全国のメーカー、卸売業者、小売業者の関係者千数百人が集まった第2回MD研究大会がありました。そこで配布された大会資料の後半部分が私の今回の論文で、実務に携わる参加者の方々に広く読んでいただけました。Barrelからは、こうした実務家だけでなく、企業間の取引関係に関心を持つ多くの流通・マーケティング研究者の方に読んでもらいたいですね。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
私が大学院生の頃、流通・マーケティング研究の大家だった師匠が、「論文は1.5人にしか読まれない、と思った方がいい」と言っていました。1人は自分、0.5人は印刷屋さんという意味です。かつて論文は書いても、目に触れる機会が少ないため、なかなか読んでもらえないものでしたが、誰でも論文にオープンにアクセスできるBarrelのようなサービスが拡がっていることで、隠れた論文というものがなくなりますよね。研究の効率も質も高まりますし、Barrelは読み手にも書き手にも大きなメリットがあるものだと思いますよ。
---
近藤先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
先生方のご協力のおかげで正式公開から2年4ヶ月あまりで登録論文数も3700編を越えました。ありがとうございました。3700編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。