平成23年2月22日登録件数が3900件を突破しました。!3900件目の文献は,企業法学科の 南 健悟先生による,
南, 健悟(2011) 企業不祥事と取締役の民事責任 (三) -法令遵守体制構築義務を中心に-. 北大法学論集, 第61巻5号: 1677-1729でした。
南先生にお話を伺いました。
Q:登録3900件目の論文「企業不祥事と取締役の民事責任 (三) -法令遵守体制構築義務を中心に-」は、どのような内容ですか?この論文は博士論文の一部で、今回3回目となる連載です。
大まかな内容としては、企業内で不祥事が起こって取締役が株主から責任を追及される場合、どのような場合に責任が認められるのかということについて検討しました。
株主代表訴訟等において取締役の責任を追及する際には、一般に学説および判例において構築を提唱されている、法令遵守体制に不備があったかということを証明する必要があるのですが、実際に会社に対する責任が認められた例は私が知る限りほとんどなく、2000年の大和銀行事件(大阪地判平成12年9月20日判時1721号3頁)くらいしかありません。
では、なぜ裁判所はそのように及び腰になっているのでしょうか。それは、裁判官は法律のプロですが、経営のプロではないので、その体制に不備があったかどうか、どのような基準で審査すればいいのか明確にわからないからです。
また何でも簡単に責任が認められると誰も取締役になりたがらない可能性もでてくるので、私個人としては、裁判所の姿勢はやむを得ないと考えています。
もちろん法令遵守体制は重要なのですが、取締役の責任が厳格になりすぎる可能性があるため、どうバランスをとっていくべきかということを検討したのがこの論文の主題となっています。連載は現在の所5回を予定しています。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?大学院に入った時に取締役の責任に興味があり、博士課程に入ってから具体的に法令遵守体制等の研究を始めました。
法令遵守体制が大事だと口で言うのは簡単ですが、実際は経営の柔軟性がないがしろにされる可能性もないとは言えませんし、企業の不祥事を取締役の責任として追及してくことは適当なのか、と考えたことが発端でこの研究を始めました。
Q:現在の研究について教えてください。この連載を完結させるべく、この論文の続きを執筆しているところです。
一方で、海商法の研究も進めていきたいと思っており、船舶が関係する商取引や事故を起こした際の責任関係について勉強しています。
実は日本の船同士が事故を起こした時の責任関係というのは、ベルギーをモデルとして構築されている部分もあるんですよ。ですので、これからはベルギー法についても勉強してみようかとも思っています。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。学者にとって一番嬉しいのは論文を読んでもらって支持を受けること、批判されることなので、同じ研究をしている大学の先生方に読んでいただいて色々ご意見を頂戴できればと思います。
また、普段テレビでも企業の謝罪会見として目にするように、題材自体は難しくないので、「会見では頭を下げているけど本当にあれで良いのだろうか」のような疑問を持った学生や一般の方にも読んでいただきたいと思っています。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。インタビューを受けた先生方の写真があるのはとても良いと思いました。研究者同士でも名前は知っているけどどんな人かわからないという方は多いですし、顔が目に見えるというのは良いですね。
論文を出すたびに持って行くので、Barrelには大変お世話になっています。今のところ要望はとくにありません。引き続き、私の論文を受け取っていただけるだけで嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
南先生、お忙しい中ありがとうございました。先生方のご協力のお陰を持ちまして、Barrelに掲載されたご著作も公開から3年ほどで3900件を超えました。本当に有難うございます。今後もご著作の寄贈を心よりお待ちしております。