お知らせ

2018年8月~2019年7月に小樽商大に着任された先生方へご研究インタビューを実施しました。
ご協力いただいた教員の皆様、どうも有り難うございました!



西口 純代 先生 (言語センター)


●研究内容について

言語学の「形式意味論」という分野を研究しています。

この「形式意味論」は、論理学、数学、哲学どれにも近いですが、
とりわけ論理学に近い分野です。工学部の情報学科などの計算でも使います。
数式や関数のようなものですので、どんな言語にもあてはめて使うことができます。
例えば、「ねむい」という単語を、「眠い人=x」の集合ととらえますと、
xに眠い人が入ると真、眠くない人が入ると偽の式となります。
複数の項が関係する文脈になると二項関数、三項関数、と変化します。
文脈から「私」とは誰か?を調べ、どういうときに真なのか?偽なのか?を判断するには
哲学の考え方が必要となってきます。
私は哲学はやっていませんが、同じ分野で哲学と言語学を両方やっている研究者もいます。
また、コンピュータサイエンス系でこういった論理を使うことが多いので、
人工知能学会などから論文を出すことが多いですね。

●研究を始めたきっかけ

大学院に行ってから、Yale大学からきた先生のお話を聞いて凄く面白かったのです。
「否定」という分野のお話だったのですが、
指導教官がこの分野はニッチで面白いのでやったらいいと薦めてくれました。
この「否定」という分野を研究するには論理が必要であり、「形式意味論」を使うと
いちばんきっちり書けると気づきました。修士論文もこの分野で書きました。
きっかけを与えてくれたYale大学の先生とは今でも親交があり、
「grandpa」とお呼びして慕っています。

この研究では、外国から言語データを集めてくることがよくあります。
ここ10年くらいアフリカの言語を扱っており、
とくに東アフリカ少数部族の録音データを多く集めています。



三ツ木 真実 先生 (言語センター)


●研究内容について

応用言語学が専門で、この分野は言語学の考え方を応用して言語コミュニケーションに
関する諸問題を解決することを目指しています。
例えば、言語学の蓄積された知見を用いて英語教育の中でどう教えたらよいか、
また、どう学習したら英語を効率的に学べるか、やる気を高められるかなどについて
分析と考察を行います。
今は二つのことを主に研究しています。
一つ目は、認知言語学の考え方を使って英語の語彙や文法を学ぶ効果的な方法です。
例えば、ほとんど全ての英単語は複数の意味を持っています。
それを多義語と言いますが、多義語が持つ複数の意味を英語母語話者が暗示的に持っている核となる1つのイメージを通じて、
効率的に学んだり理解したりする学習方法があります。
それがどのくらい学習に効果的なのかを実証的に検証したり、
学習者がどのようにそれらのイメージを使用するかなどの学習者の認識を分析する研究です。
二つ目は、最近始めたことなのですが、英語学習のモチベーションにおいて、
どうしてやる気が下がるか、上がるか、維持するか、などを分析・考察することです。
それ以外にも、どうしてこの学習者はやる気を上げたのか、なくしたのか、どうしたら回復できるか?について
学習者の周辺にある環境要因も考慮した研究を行っています。
そのために、今は少人数をターゲットにして経験(ライフヒストリー)を語ってもらい、
英語学習のやる気と学習環境の関係、内的な変容はあったのか?などについて
データを集め、分析・考察を行っています。

●研究を始めたきっかけ

動機としてはもちろん英語学習や英語教育に興味があったこと、になりますが、
大きなきっかけは中学校で英語を教えた経験かと思います。
その時に、自分が学部時代に学んできたことが英語教育の現場に還元できていない、
せっかく学んだことが武器になっていない、ということに気づき、
自分が学んできた認知言語学というバックグラウンドを活かして
英語教育に携わりたいと思い始めました。
その後高校教師を経て大学院へ入り、今の研究を始めました。
研究で得られた成果は、現場の先生方が教える時の引き出しの一つとして
持っていてほしい知識だと思いますし、
教員になりたい人たちにとっても得難い引き出しとなりますので、
意義のあることだと感じています。



藤原 健祐 先生 (アントレプレナーシップ)

 


●研究内容について


「地域医療」がキーワードです。地理情報システム(GIS)とも深い関わりがあります。

北海道は広域分散型であるため、地域の医療格差が生じやすく、

「医療資源」の適正配置ができればその格差が是正されるのではないかと

考えています。

「医療資源」というのは、今研究対象としている脳卒中で言いますと、

専門的な治療ができる認定医師や手術に必要な医療機械、画像診断装置などのことを

指します。

これらの医療資源はとても高価なので、効率的に使用するためには

どういう場所に配置するのが良いのかを適切に判断する必要があります。

とくに脳卒中は、発症から一定の時間が経過してしまうと、

有効な治療を行うことができなくなってしまいます。

この時間的な制約に対して、病院へのアクセスのしやすさ(アクセシビリティ)が極めて重要であり、

GISを使った分析とシミュレーションによって、アクセシビリティの定量化と可視化を試みています。

このようなデータが北海道の医療政策に反映され、より良い医療提供体制の構築に寄与できればと考えています。

 

研究分野としては、多くの分野の境目にあたるため、

一つの分野に当てはめるのは難しいのですが、

主に医療政策、医療経済、医療情報に関わる分野と言えます。

GISは本学の社会情報学科で扱われています

もともとGISは使っていなかったのですが、広大な北海道の医療の状況を、

数値データや経済指標だけでは表現しきれない部分が多かったため、

GISを使おうと考えました。

 

現在は、北海道大学病院脳神経外科と脳卒中の医療提供体制について、

また、札幌医科大学病院および手稲渓仁会病院の救命救急センターとドクターヘリの新規配置や効率的な利用方法について

共同研究を行っています。

 

共同研究をしている医師からは、医療はこれまで経験則で動くことが多かったので、

経済分析やGIS分析など、定量的な分析を基に情報を提示すると、

変化を生じやすいと言われています。

そういう意味では私の研究分野は医療システムの変革において、

いま、大変求められている領域だと考えています。

 

 

●研究を始めたきっかけ


私は、最近のドラマにあった「ラジエーションハウス」に登場する

診療放射線技師という国家資格を持っています。

技師の仕事はやはり画像診断という領域に限られてしまいます。

病院で働いている中で、もっと医療はよくなるのではないか?と思うようになり、

そのためには医療全体のシステムを変える必要があるのではないかと考えるようになりました。

どうすれば全体を変えられるか、と考えたときにたどり着いたのが医療政策や医療経済でした。

もともとは物理など理系分野を学んでいたこともあり、

経済の中でも数理データを扱う定量的な分析を行っています。




髙橋 優季 先生 (言語センター)


●研究内容について

19世紀後半~20世紀初頭の英文学を研究しています。また、同時代の工芸美術についても調べています。
地域的にはイギリスとアイルランドを取り扱っています。
英文学の授業では、工芸美術と文学が関連する部分を意識的に強調しています。
例えば、短編小説などを出版当時に制作された挿絵を見ながら精読する、といった具合です。
とりわけ、ウイリアム・モリスの作品は是非学生に親しんでもらいたいです。
モリスは実際にヴィクトリア朝のイギリスを代表するインテリアデザイナーでありながら詩人でもあり、
彼の人生そのものが工芸美術と文学を結び付けています。

これから進めてゆきたい研究は、ウィリアム・バトラー・イェイツとスコットランドとの結びつきを調べることです。
博士論文では、イェイツの伝記的背景と文芸創作が、アイルランドにおける「アーツ・アンド・クラフツ運動」との間に
どのような文化的かつ相互的な影響関係を築いてていたかを実地調査と一時資料をもとに実証しました。
その過程で、「ケルト復興」という文学運動の主たる指導者として位置付けられてきたイェイツの影響が、
スコットランドにも及んでいたということが明らかになりました。
今後はその実際をさらに詳しく検証していきたいと思います。
ほかには、イェイツの弟であるジャック・バトラー・イェイツの功績を探ってみたいと思っています。
彼は一般的に20世紀アイルランドの代表的な画家として認知されていますが、
同時に多くの小説を書き詩人としても活動していました。
例えば、その活動初期に彼がトイ・シアターという、
イギリスのヴィクトリア朝時代に広く親しまれた紙人形の芝居を制作していたことなどは、
非常に面白い側面だと思います。
また、ウィリアム・バトラー・イェイツにはリリィとロリィという二人の妹がいて、
彼女達はアイルランドのアーツ・アンド・クラフツ運動の中心人物でした。
リリィ・イェイツは刺繍師として、ロリィ・イェイツはや水彩画の講師を経て
後に書籍印刷の専門家として活躍しました。
このように、イェイツ姉弟など、日本ではまだよく知られていない偉人たちの功績への注目を高めることに、
少しでも貢献出来たらと思います。

●研究を始めたきっかけ

このような研究に入ったきっかけは、ハリー・クラークとの出会いです。
クラークは、20世紀初頭にアイルランドのステンドグラス職人として、
また挿絵画家としても今なお高く評価されています。
大学院生時代にウィリアム・バトラー・イェイツの伝記研究を進めていた頃のことでした。
ひょんなことからイェイツと活動時期を同じくする、
クラークというアーティストを知りました。
ちょっと不気味な妖しさを湛えながらも、
青を基調としつつ様々な色使いと細密画のように微細なグラフィックデザインを特徴とする
クラークのステンドグラスにすっかり魅せられた私は、
自分の研究対象であったイェイツと、この時知ったばかりのクラークとの間に
何らかの繋がりが有るのではないか、いや有ってほしいとさえ思いました。
調べてみると、確かにこの二人の間には実際に交流もあり、
イェイツは上院議員時代にクラークの作品を「世界一美しいステンドグラス」だと称え、
彼を中心とするアイリッシュのステンドグラス職人の経済的支援も訴えていたことが分りました。
さらに、イェイツが「ケルト復興」のみならず
アイルランドの「アーツ・アンド・クラフツ運動」に対して様々な側面から助言や援助を与えていたこと、
そしてイェイツの文芸創作自体もまた、クラークはじめ同時代の工芸美術職人らにとって
多大なインスピレーションとなっていたことも分かりました。
そこで、イェイツとその祖国におけるアーツ・アンド・クラフツ運動との関わりを体系的に精査し、
伝記的研究と文芸批評の両側面から捉える方向に舵を取ることにしました。


そもそも、なぜイェイツのような難解な詩人に関心を持ったのか?とは、
よく尋ねられる質問ではあります。
その理由は、大学院修士課程に在籍していた頃にさかのぼります。
当時は、ファンタジー小説によく出てくる妖精に興味を持っていました。
この超自然現象の一つのような妖精とは、もともとある種の信仰対象として、
アイルランドをはじめとする所謂「ケルト地方」の随所に口承伝承として
長く語り継がれ信じられてきたものです。
イェイツは、「ケルト復興」を通じて、これら妖精にまつわる民話や民謡を
採集し編纂し形に残していたという事を知りました。
これが私がイェイツという大詩人に興味を寄せた最初のきっかけでした。



岩澤 正宗 先生 (経済学科)


●研究内容について

分野は計量経済学です。
計量経済学とは、経済モデルを実際の経済のデータにあてはめるために
必要な統計手法を考えるという学問です。

これまでの研究では、例えば、分析に使いたいモデルが正しいかどうか統計的に検証するための手法を提案しました。
簡単な例として、将来の賃金と学歴の関係を知りたいとします。
平均的に見れば、教育年数が増えると賃金が増えると考えるのは妥当だと思います。
しかし、その上がり方が直線的なのか、それとも逓減していくのかによって、
分析に適したモデルが異なることが想像できると思います。
賃金と教育年数のように、変数が2つしかない場合には、
それらを平面上にプロットすることでモデルが妥当であるかを視覚的に確かめることができますが、
変数が4つ以上ある場合にはそう簡単にはいきません。
そこで、変数が多い場合でも、モデルが妥当であるかを統計的に検定する手法を用いることで、
そのモデルを用いて分析をすることの信憑性・説得力が増します。

最近は、機械学習を計量経済学上でうまく応用する方法を考えています。
経済の問題へ機械学習をうまく応用している先行研究の例に、
職業訓練や支援の割り当てがあります。
職業訓練や支援には様々なタイプのものがあります。
どのような人にどのタイプの支援をするかで、失業者の就職率や賃金などの成果が変わることは容易に想像できると思います。
ここに機械学習をうまく応用することで、日々追加されてゆくデータから、
支援の効果的な割り当てを模索することが可能となります。

主に理論研究をしていますが、実用的な手法を提案できるように心がけて研究を進めています。
研究を進めていく際には、おおよその着地点は予想しています。
しかし、結果は必ずしも予想通りになるわけではなく、予想外の結果を得ることもあります。
予想とは違う結果から新たな発見があったりすることにも研究の面白さを感じています。

●研究を始めたきっかけ

学部生の時に授業で何をやっているのかさっぱりわからなかったのが計量経済学でした。
実は、計量経済学の理論が全くわからなくても、統計解析ソフトウェアを使えばクリック1つで分析ができたりします。
しかし、計量経済学をブラックボックスにしたまま分析をして得た結果は、
自分が投げかけた問いの解にはなっていないかもしれず、
そんな研究は社会に有益どころが有害になり得ます。
このため、実証分析をする前に計量経済学をしっかり理解したいと思い、
計量経済学の勉強を始めました。
いまだに分からないことが多く、本格的に実証分析を始めるにはまだ時間がかかりそうです。