Barrelの収録文献が平成20年4月23日に500件を超えました!
500件目の文献は,言語センターの江口修先生による,
江口, 修 (1997) 瞬間と永遠 ―ロンサールの詩的時間構造―『Revue des Amis de Ronsard』10 , pp225-239
でした。
江口先生にお話を伺いました。
Q:登録500件目の論文「瞬間と永遠 ―ロンサールの詩的時間構造―」は,どのような内容ですか?
フランス16世紀の国民詩人、ピエール・ロンサールについて、「時間」の捉え方に焦点を置いて考察しました。「瞬間と永遠」というのは、「現実的な人間の生の営みの儚さ」と、自分の詩人としての名を不朽のものにしたいという「永遠性への憧れ」を表した言葉ですが、ロンサールはこれらの相反する概念を詩のエネルギー源として使っていたと思われます。
また、この論文の中では、16世紀の人々と現代の人々の抱く時間・歴史への概念の違いを考えました。16世紀の詩人たちが持っていた 時間への意識を再構成し、ロンサールが詩作において時間をどのように用いていたか、という分析に繋げていったのです。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
30年前に小樽に来たとき、せっかくこんなのんびりした土地に来たのだから(笑)、時間をかけてじっくり取り組める研究をしたくなったのです。もともとは現代のシュールレアリスムの研究をしていたのですが、小樽では16世紀フランスの研究を始めました。この時代 は人間の想像力が一気に開花した時代であり、中世とも現代とも、つながっているようでつながっていない、そこが面白いと思えましたね。
Q:現在の研究について教えてください。
まず一つは、これまでも述べてきたように16世紀フランスのルネサンス期の研究です。この時代は中世を引きずりながらストレートに 現代とも結びつかない、いわば宙吊り状態のなかで特徴的な文学が開花したという点が魅力です。
もう一つ、現在取り掛かっているのは、1920年代のアヴァンギャルドの時代に、パリで活躍した新聞ジャーナリスト、松尾邦之助についての研究です。彼は小樽高等商業学校教官、松尾正路氏の実兄です。この時代は第1次大戦と第2次大戦の狭間であり、16世紀、百年戦争と宗教戦争の狭間のつかのまの平和の中で多彩な文学・芸術が生み出されたのと似通った現象が見られるという点で、非常に興味が持てるのです。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
自分の論文がこんなに広く公開されるとはまったく想定していなかったので、かなり怖いですね(笑)恥をさらすようで、読んで欲しくないという思いもありますが・・。
しかし、人文社会系の研究はできるだけ多くの文献にあたるのが基本なので、これからの若い研究者たちには是非とも読んで欲しいと思います。
また、このような著作物には著者の人となりが表れるものです。卒業生のみなさんに読んでもらって昔を懐かしんでもらったり、現役の学生たちにも論文を通して、授業とは違う先生の顔を知ってもらえたら嬉しいですね。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
世の中には物知りが多いので、厳しい指摘を受けるのではないかと恐れる面もあります。でもそのおかげで書くものにより責任を持とうとするようにもなるでしょう。論文にたどり着くのが容易になるのは学問の進歩にとっていいことですし、この先、遡及的に過去の論文が増えてゆけば、かなり役立つようになると思います。また、世界中から検索できるので、インターネット翻訳がさらに進めば、学術の国際交流に大いに貢献できることでしょう。
興味を持った方へ!...江口先生からのオススメ入門書
青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月10日に追記しました。
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江口先生、お忙しいなか、貴重なお話ありがとうございました。インタビューの中に出てきた、先生の松尾邦之助についての論文をBarrelから読むことができますので、どうぞご覧ください。
「松尾邦之助とパリ その1 狂乱の時代」小樽商科大学人文研究, 115: 65-77 (2008-03)
先生方のご協力のおかげで正式公開から1ヶ月半あまりで500件に達しました。ありがとうございました。500編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。