Barrelの収録文献が平成20年5月13日に700件を超えました!
700件目の文献は,一般教育の宝福則子先生による,
宝福, 則子(1998) ドイツの環境政策 : 循環型経済・廃棄物法をめぐって(その二). 『商学討究』49(1), pp71-90
でした。
宝福先生にお話を伺いました。
Q:登録700件目の論文「ドイツの環境政策 : 循環型経済・廃棄物法をめぐって(その二)」は,どのような内容ですか?
1996年に施行されたドイツの新しい廃棄物法について調査した論文です。この法は先進国の「大量生産、大量消費、大量排出」の問題を規制するためEUが定めた厳しい基準に対して、ドイツの国内法を適合させるために制定されたものです。
この法律は、自然資源保護のための循環型経済(廃棄物回避と再利用)の促進及び環境に適う廃棄物除去の確保を目的として、2つの画期的な特徴を持っています。1つ目は、ゴミの排出を「抑制」するのではなく「回避」するという視点からゴミ問題を捉えたことです。ゴミを「出ること前提」ではなく、「出さない」という方面から規制したのはとても先進的なことです。2つ目は、廃棄物の概念を従来より拡大し、当初の利用目的を終えたものは、実際に再利用されるまでは、所有者の意志によらず全て廃棄物であると規定し、発生者、所有者の処理責任を具体化したことです。
未来の人類への責任のため、そして先進国の大量廃棄のツケを途上国へ回さないために、この法律は大変有意義で、重要な位置づけを持つと思います。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
1996年3月から1997年9月まで、研究 のためにドイツのカッセル総合大学へ行っていました。ちょうどそのころは廃棄物法が制定されたばかりで、環境法関係のセミナーやイベントが頻繁にあり、環境法を研究するにはタイムリーな時期だったのです。
また、もともとは発展途上国の環境について研究していたのですが、結局は先進国の「大量生産、大量消費、大量廃棄」のツケが途上国の環境を侵害してゆくので、先進国の廃棄物問題を解決する方法を考えてみようと思ったわけです。
Q:現在の研究について教えてください。
今、講義では「排出権」も取り扱っています。これは、温室効果ガス排出量の数値目標が設定されている先進国間で排出枠の売買を認める制度です。京都議定書では先進国に対し、温室効果ガスを減らすことを義務付けましたが、最大の排出国であるアメリカをはじめ、同意に至らなかった国がありました。しかし「エコビジネス」といって「排出権」が市場で取引の対象となることから、排出権が注目されはじめています。
先に述べたように、先進国の大量消費、大量廃棄のしわよせが途上国の環境を破壊しており、世界的に不足している大豆生産のためにアマゾンの森林を次々と焼き払い、大量の二酸化炭素が排出されています。地球温暖化への悪循環をどうしたら断ち切れるのか、先進国の立場から模索してゆかなくてはならないのです。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
研究者というよりは、学生さんをはじめ若い人たちに広く読んでもらいたいです。学習や卒論に役立てるほか、この論文を読むことで社会問題に関心を持ってもらえたらいいな、と思います。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
ダウンロード数を通知してくれるシステムがいいですね。自分の論文に多くの人が関心を持ってくれていると思うと励みになりますし・・。また、インターネットで簡単に検索でき、プリントアウトもできるのは大変助かります。外国にいてもすぐ論文を呼び出せるのですから、時代の先端を行っていますよね。
最近は学生でもインターネットで資料を検索する人が増えているので、Barrelに載せることで学生に読んでもらえる可能性も多くなりますし、授業で自分の論文をWeb上から手軽に紹介できるのも嬉しいですね!
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宝福先生,お忙しいなか,貴重なお話ありがとうございました。
「ドイツの環境政策 : 循環型経済・廃棄物法をめぐって(その二) 」の先行論文および続きをBarrelに掲載していますので、併せてご覧ください。
「ドイツの環境政策 : 循環型経済・廃棄物法をめぐって」商学討究, 48(4): 87-113: (1998-03)
「 ドイツの環境政策 : 循環型経済・廃棄物法をめぐって(その三) 」商学討究, 49(2/3): 57-72 (1998-12-25)
先生方のご協力のおかげで正式公開から2ヶ月あまりで700件に達しました。ありがとうございました。700編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。