高頻度利用第1位記念インタビュー

2008年8月7日,Barrelの利用統計(高頻度文献リスト)を公開しました! これを記念して,正式公開後,この日までの全期間で最も高頻度に利用された文献について,著者の先生にお話を伺いました!

2008年3月7日~8月7日の期間Barrelから高頻度で利用された文献第1位は,商学科の乙政佐吉先生による,
乙政, 佐吉 (2005) 方針管理とバランス・スコアカードの関係に関する研究. 環太平洋圏経営研究, 6: 103-135

で,374回のダウンロード数でした! 乙政先生にお話を伺いました。

Otomasa senseiQ:論文「方針管理とバランス・スコアカードの関係に関する研究」は,どのような内容ですか?

1990年代初頭にアメリカで開発された「バランス・スコアカード」(略してBSC)について述べた論文です。BSCとは,経営者,経営管理者が会社の業績を測定する,いわば得点表のようなもので,多面的に,四つの視点(財務,顧客,ビジネスプロセス,学習と成長)からバランスよく管理することで,業績アップにつなげようというものです。利益だけでなく,顧客や従業員の満足度など,いろいろな面を測定するのが特徴です。
日本には従来,「方針管理」と呼ばれる業績測定システムがあったのですが,このBSCがアメリカから入ってくるにつれて,方針管理ではなくBSCを取り入れた管理をおこなう会社もあれば,BSCと方針管理を併用するところ,従来の方針管理のままでゆこうとする会社など,様々なパターンが現れました。この論文では住宅設備機器メーカーのA社を例に取り,BSCと方針管理が互いに補完し合った様子を考察しました。両者の相違点,類似点などを挙げてみることで,それぞれの長所,短所がわかり,このような考察自体が,既存の研究に対するひとつの提案になるのではないかと思ったのです。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

もとはサラリーマンで経理をしていたので,会計には関心がありました。決算書を作りながら「この作業に意味があるのだろうか・・・」と悩んだことも(笑)
その後,大学院に戻り,「バランス・スコアカード」についての本を読んだのです。アメリカのキャプランら,有名な学者が執筆した論文を読み,「面白い!皆がBSCを取り入れたらいいのでは!」と強く思ったことが,この研究を始めた契機でしょうね。


Q:現在の研究について教えてください。

BSCについてずっと研究しています。元々「方針管理」という方法を取っていた日本企業がなぜ新たなBSCという管理方法を取り入れるのか,また,取り入れる会社と取り入れない会社の違いは何か,疑問に思い,考察してきました。教科書では「方針管理」とBSCの差はあまり分からないのですが,企業は各自使いやすいようにカスタマイズして導入することになるので,事例は千差万別なのです。

BSCを導入することによって成果はあるのか,ないのか,あるとすればどんな成果か,という点を検証していきたいと思っています。


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

そうですね,まずは遠い故郷から見守っていてくれる父と母に(笑)。
Webで公開されるという利点を大いに生かして,実務家,院生,他大学の教員など幅広い層の方々に読んでもらって,役立てていただけたら嬉しいですね! 


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

海外の論文は電子ジャーナルで読めるものもありますが,国内の論文はやはりまだ紙媒体が多いですし,印刷などの手間がかかります。Barrelはいつでもどこでも,簡単に論文を閲覧できるので大変助かります。今後もどんどん論文を書いて登録してもらいたいと思っています。大いに応援しています!
最後に一言。「がんばれ,バレル。ひろまれ,バレル。われらのバレル!」 


recom. books  興味を持った方へ!...乙政先生からのオススメ入門書

ロバート・S・キャプラン, デビッド・P・ノートン著 ; 櫻井通晴監訳 『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』 東洋経済新報社, 2001

ポール・R.ニーブン著 ; 松原恭司郎訳 『ステップ・バイ・ステップバランス・スコアカード経営』 中央経済社, 2004

高須久著 『方針管理の進め方 : 方針書の作成から展開方法』 日本規格協会, 1997


青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月24日に追記しました。

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乙政先生,お忙しい中,貴重なお話,ありがとうございました。

これからも附属図書館では,先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします!