Barrelの収録文献が平成20年11月19日に1100件を超えました!
1100件目の文献は,商学科の中浜隆先生による,
中浜,隆(2005) アメリカにおける個人医療保険の料率規制. 損害保険研究, 67(1): p.27-51でした。
中浜先生にお話を伺いました。
Q:登録1100件目の論文「アメリカにおける個人医療保険の料率規制」は、どのような内容ですか?
過去15年ほど、ずっとアメリカの医療保険について研究しているのですが、これはその間に書き続けてきた一連の論文の中のひとつであり、最終的なものと言っても良いと思います。
日本には国民全体を対象とした公的医療保険がありますが、アメリカでは公的保険は65歳以上の高齢者のみを対象としており、それ以外の非高齢者はだいたい民間の医療保険に加入しています。民間の保険は、企業が購入する雇用主提供の保険と、個人経営者等が加入する個人医療保険の2種類に分けられます。
前者は職場を通じて会社が従業員とその扶養家族のために任意で保険を購入するものですが、公的保険が所得に基いて保険料を決めるのに対し、民間保険はリスクの大小に応じて料率を決められるため、企業がリスクを嫌い、従業員に対して医療保険を提供しなくなる、という事態が起こり始めました。1980年代から1990年代初頭にかけてのことです。
そこで、1990年代に入ると、州政府が、保険料の格差を是正し、無保険者を無くすために、中小企業と個人に対して数々の規制をおこないはじめたのです。特に個人に対しては、リスクの高い世帯と低い世帯の格差を是正するために各州で様々な規制が設けられました。
因みに、アメリカでは民間保険が任意であるため、現在約4600万人の無保険者が存在すると言われています。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
大学院生のころからずっとアメリカの生命保険と医療保険について研究を続けてきました。院生時代から本学に着任して5年くらいは主に生命保険について研究していたのですが、博士論文に纏めることで、この研究はひと段落した感じです。
次に医療保険の研究に移り、15年くらいアメリカの医療保険について調べ続けています。日本では1990年代に規制緩和が進み、保険業界の自由化の動きが高まったのですが、これに対し、アメリカは逆に規制が強まりました。この相違が非常に面白く、興味を惹かれますね。
Q:現在の研究について教えてください。
15年間、医療保険について研究してきましたが、これもひと段落したので、今度はアメリカの介護保険制度について研究し始めています。日本では2000年に公的介護保険がスタートしましたが、アメリカには現在、公的な介護保険は存在しません。そこで、民間の介護保険について調査に取り掛かろうとしているところです。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
とても苦労して書いたので、出来るだけ多くの方々に読んでもらいたいですね(笑)大学の研究者のみならず、保険業界の実務家の人たちや、実際に保険の規制をおこなっている金融庁の監督当局の方々に読んでもらって、広く役立てていただけたら大変嬉しく思います。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
まずは、大変すばらしいことだと思います!私が研究する上で必要なのは、ほとんどアメリカの文献です。アメリカで出版された本や学術雑誌は日本に居ても手に入りますが、民間の研究機関が出している報告書などは、著者とタイトルしか公開していないものも多く、実際に現地へ赴き研究機関を訪問しなくては手に入りません。実際、2度ほどワシントンへ行って文献をもらってきましたが、アメリカまで行くのは非常に大変です。それを思うと、研究室に居ながらにして文献が手に入る、Barrelのような手段があるのは本当に素晴らしいことだと思います。今後、もっと多くの機関でこのようなシステムを取り入れてくれれば、大いに助かることでしょうね!
興味を持った方へ!...中浜先生からのオススメ入門書
青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月8日に追記しました。
---
中浜先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
先生方のご協力のおかげで正式公開から8ヶ月あまりで登録論文数も1100編を越えました。ありがとうございました。1100編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。