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Barrelの収録文献が平成21年6月5日に2200件を超えました!
2200件目の文献は,企業法学科の齋藤由起先生 による, 齋藤, 由起 (2008) ドイツ新消滅時効法 : 改正時の議論を中心に (2008年度比較法学会ミニシンポジウム 世界の時効法の動向 報告III). NBL, 881: 60-70でした。
齋藤先生にお話を伺いました。
Q:登録2200件目の論文「ドイツ新消滅時効法 : 改正時の議論を中心に」は、どのような内容ですか?
この論文は、昨年(2008年)の比較法学会で、イギリス、カナダのケベック州、ドイツ、フランスの消滅時効法の改正の動きについて「世界の時効法の動向」というタイトルのミニ・シンポジウムを行ったのですが、その中で、私が担当したドイツ法について検討したものです。時効といえば、みなさんは、最近では重大犯罪についてその廃止が議論されている刑事上の時効を思い浮かべると思いますが、ここでいう時効はまた別の話です。民法上の消滅時効というのは、例えば、AがBに100万円のお金を貸しているときに、約束の支払期日から一定期間を経過すると、たとえBが支払っていなくても、BがAの権利がもう時効にかかっているのでこの借金を支払わないと主張すれば、AがBに対して裁判所を通じて100万円を返せ、と請求できなくなるという制度です。日本民法典の母法国の1つであるドイツでは、この時効期間をどのくらいの長さにするか、また、どの時点を時効進行のスタートラインとするか等について、2002年に大きな改正がなされました。この論文では、ドイツで法改正がなされた経緯や新法の概要を、改正時の議論と合わせて紹介したうえで、EUにおける法統一の動きとドイツにおける法改正との影響関係や日本法への示唆としてはどのようなものが考えられるかについて分析しています。この論文を書くにあたっては、ドイツやフランスに調査に赴き、現地の研究者や裁判官や弁護士をはじめ、立法に携わった担当者にインタビューしたり、議論したりしてきました。このおかげで、文献を読んでいるだけではわからない、各国固有の議論の背景などにも迫ることができ、日本で消滅時効法を新たに制度設計し直すためのヒントを得ることができました。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
この研究は、2007年から今年の春まで活動していた「時効研究会」の研究成果の一部です。時効研究会は、時効法研究について第一線で活躍する研究者を中心とする民法研究者の集まりです。現在、日本では、世界的潮流に追随するかたちで、債権法や消滅時効法を中心として民法典の改正作業が進行していますが、時効研究会は、消滅時効法に対象を絞って、各国の時効法改正の動向に関する比較法調査を土台に、個別の論点について検討し、最終的に、消滅時効法の改正案を作成しました。その成果は、2008年の比較法学会のミニシンポの他に、2008年の私法学会のシンポジウム「消滅時効法の改正に向けて」(議論の様子は、私法71号に掲載)、金山直樹編『消滅時効法の現状と改正提言』(別冊NBLNo. 122)(商事法務、2008年)で公表されています。私は、実は、それまで時効法について特に専門的に研究していた訳ではなかったのですが、この研究会で勉強するうちに、すっかり時効の魅力にとりつかれてしまいました(笑)。
Q:現在の研究について教えてください。
1つは、大学院時代から研究している保証制度に関する研究です。保証は人的担保の1種ですが、比較法的にみてもだいたい1980年代あたりから、保証人を保護すべきという風潮が高まってきて、ドイツやフランスをはじめとする諸外国では、保証人を保護するような判例や立法が続々となされています。保証という仕組みに対する考え方の変化の過程やその背景を解明するのが今の目標です。もう1つは、せっかく時効について足を突っ込んだのですから、この研究も続けていきたいと思っています。とりわけ、銀行のような金融機関が債務者にお金を貸して保証人をとったときに、保証債権の時効をいかに管理するかという問題に興味があります。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
市民の方に読んでいただけたら一番よいと思うのですが、やはり内容が難しいと思うので、同業者である法律の研究者や、弁護士や会社の法務担当などの法律の実務家の方に読んでいただければと思います。 また、商大では卒論が必修なので、ゼミ生に読んでもらって論文の書き方の形式を学んでほしいです。できれば中身も!
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
Barrelのようなサイトは非常に便利だと思います。でも、他大学ではBarrelのようなサイトはまだあまり発達していないのでしょうか?自分の読みたいと思う論文はなかなか見つけられなくて・・・。あっ、見つかると図書館にコピーを取りに行かなくなるので運動不足になるかもしれませんね(笑)。また、他の先生もおっしゃっていましたが、ダウンロード件数を毎月、通知してくれるのは励みになります。 Barrelに対する意見というより、商大全体の業績管理システムに対する希望ですが、業績一覧を様々な形式で何回も提出しなくてはいけないので手間がかかります。例えば新しい業績ができたときに、どこか1箇所に提出すると自動的に一括して管理していただけるようになるといいなと思います。 教員の数が少ないのに、すでに2200件も論文が集まっているというのはすごいですよね。
--- 齋藤先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
先生方のご協力のおかげで正式公開から約1年3ヶ月で登録論文数も2200編を越えました。ありがとうございました。2200編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。
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