Barrelの収録文献が平成21年8月28日に2700件を超えました!
2700件目の文献は,経済学科の船津秀樹先生による,
船津, 秀樹 (2009) 中札内村を支える農業と北海道総合開発. In 「むらの魅力」の経済学 : 北海道の代表的風景・中札内村の研究. 第2章: 27-44でした。
船津先生にお話を伺いました。
Q:登録2700件目の論文「中札内村を支える農業と北海道総合開発」は、どのような内容ですか?
北海道開拓のなかで中札内村がどのように形成されたのか、北海道総合開発計画と中札内村農業の歴史との関係、中札内村における有機農業の取り組みや全村農業生産法人化について取り上げ、中札内農業の今後の展望と課題についてまとめました。ひとことで言うと、「日本経済の問題を中札内村という小さな地方公共団体の視点から考察した」もの、です。
中札内村は北海道有数の農業地帯で、早くから有機農業を手がけています。また、帯広市との合併問題に直面した時期があったのですが、住民の意思として、合併をせず村のまま存続しています。私も合併せず村のままでいた方が、中札内村のよさを活かせると考えていました。
中札内村では、農業の基盤がしっかりしていて、合理的な経営がなされ、農業従事者が交代で休暇を取れる体制を早い時期からとってきています。最近では、鶏、たまご、枝豆などのブランドの確立も図っています。一方で、手をかけ安全で美味しいものに適切な対価を支払う「フェアトレード」の考え方も広まってきています。中札内村の農業のあり方は、日本だけでなく、発展途上国の農業にヒントを与えるのではないでしょうか。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
2005年から2007年にかけて関西学院大学の先生方と行った共同研究のプロジェクトです。その成果の一部をまとめたのが、この論文が収録されている本『「むらの魅力」の経済学 : 北海道の代表的風景・中札内村の研究』です。この本の編者である山本栄一先生は、私がアメリカの大学で学位論文を執筆中、同じ大学に在外研究に来られ、以後親しくさせていただいています。定年退職前の最後の研究として北海道を選ばれ、私に声をかけて下さいました。都会に住む関西の先生方と議論することは北海道で暮らす私にとっても意義深いものでした。
Q:現在の研究について教えてください。
現在は、国際ビジネスと教育投資の関係について研究しています。経済のグローバル化が顕著な現在、企業活動のグローバル化も進んでいますが、世界的になる企業とローカルにとどまる企業、その差はどこから生じるのかという問題を考えています。私は「人」が重要だと考えています。国境を越えて、人と人が触れ会う経験が大切なのではないかと考えています。ここ数年、広島大学留学生センターの先生たちと、学生の国際間移動がビジネスの発展とどう関連するか、共同研究を行なっています。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
まずは、同じようなことに興味をもった若い研究者です。研究成果を論文にまとめる作業は、先人の研究に何か新しいことを加えていく知的作業でもあります。同じようなテーマでこれから研究する人たちが、同じことを一から始めなくてもよいように、アイデアを文章化していく作業を、Barrelを使ってできればと思います。(もう年なので。)
また、常に現実の政策を意識して来たので、政策立案を考えている方々にも読んでもらえるとありがたいです。
私の論文には英語で書いたものもありますが、啓蒙的なものは、大学の学部生にも理解できるように書いているので、年齢、国籍を問わず、幅広くたくさんの人に読んでもらって生涯教育の一助となればと考えています。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
方向性としてはよいと思います。書き手として、過去の著作をより多くの人に読んでもらえることはとてもありがたいと感じています。多分、次は、読み手に対して付加価値を付けていったら利便性が上がるのではないでしょうか。例えば、電子ジャーナルのようにリンク機能があると便利だと思います。論文の参考文献に載せているURLにリンクを張り、リンク先からもBarrelへのリンクを張ってもらうなど相互リンクの仕掛けがあると、利用がますます増えるのではないかと思います。
Barrelは学生も利用しているようですね。授業ではE-learningを活用していますが、Barrelの利用した学習効果も考えてみたいです。
また、Barrelは、公開講座や講演会の資料提供にも役立ちます。商大の図書館に来なくても、どこにいてもアクセスできるので、便利ですね。
Barrelに掲載された論文は、インターネットを通じて公開され、ずっと保存されていくので、10年、20年後の不特定多数の読み手をも想定した論文を書くことを、少し意識するようになりました。そういった知的な刺激は、教員にとってもいいことだと思います。
興味を持った方へ!...船津先生からのオススメ入門書
青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。
※この推薦本は、2009年9月29日に追記しました。
2009年10月7日にフェアトレードについての推薦本を追加しました。
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船津先生、お忙しい中、興味深いお話ありがとうございました!
研究者のみなさまのご協力のおかげで正式公開から1年6ヶ月余りで登録文献数が2700編を越えました。ありがとうございました。2700編は先生方のご著作のほんの一部でしかありませんので、これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも、ご著作をより多くの人々へ届けるため、論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします!