3400件目記念インタビュー

Barrelの収録文献が平成22年1月19日に3400件を超えました!

3400件目の文献は,商学科の前田陽先生による,
前田陽 (2008) 創業期におけるトヨタ自動車の生産体制と原価管理意識. メルコ管理会計研究, 1: 21-32でした。

前田先生にお話を伺いました。

Q:登録3400件目の論文「創業期におけるトヨタ自動車の生産体制と原価管理意識」は、どのような内容ですか?

 米国自動車メーカーが採用した大量生産方式とは異なるトヨタの生産体制(ジャスト・イン・タイム、 少量生産体制、部品の内製化等)について、今では広く知られていますが、何故そうした生産体制が構築され成功したのか。これの萌芽を本論文では扱っています。トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎氏は製品の原価管理に極めて熱心な人物でした。利益は、「利益=売上-コスト」という式で算出されますが、トヨタは自動車の製品コストを出来るだけ低減させ、ライバル企業よりも相対的に安価な自動車を販売しても利益を生み出せる生産体制などのシステムを構築し、ここまで伸びてきた企業です。じゃあ、何でそうした生産体制がトヨタで構築されたの? という問題意識から、この論文では、トヨタの創業期(1930年代)まで遡って分析しました。そして、その結果として創業者の原価管理意識が同社の生産体制に極めて大きな影響を及ぼしていたんだということを明らかにしようとしたものなのです。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

 一橋大学の大学院で博士論文として提出した「トヨタ自動車における原価管理生成史の研究」の一つの章を新たに読みやすく、加筆修正を行なったものが、本論文です。現在は少し問題が騒がれていますが、博士論文を執筆していた2005~2006年当時は、トヨタが世界自動車販売台数でGMを抜いて、第一位に迫るかという上り調子で本当にイケイケの時代でした。ですから、そのトヨタの強さの秘密を、今の社長(豊田章男氏)の祖父である豊田喜一郎氏の創業期という時代にまで遡って分析することは、大変意義があったと思います。想像もつかないでしょうが、1930年代なんてフォードやGMといった外国車が日本の道路を跋扈して走っていたわけですから...そんな時代に誕生したトヨタが今や立場を逆転させ、自動車産業のトップにまで上り詰めました。この論文で明らかにしたような創業者が構築したプロセスや発想というものは、きっと自動車だけではなく、他の製造業、もしかしたらサービス業でも通用するんでしょうね。


Q:現在の研究について教えてください。

 現在は、日本企業における原価管理、コストマネジメントについて研究しています。いかにして原価を低減させるか、いかに作り込んでいくのかを扱っています。良い実践方法を研究する上で、主に、NEC、トヨタ、前川製作所などをモデルにしていますが、他にも良い事例があれば採り上げるつもりです。安く製品を作れば、お客さんも大喜び、企業間の競争意欲も高まる訳ですから、このコストマネジメントは非常に重要なんです。そして、原価管理が特に優れている一社としては、トヨタが挙げられるんでしょうね。
これらの研究では、多くのツテを頼って、NECや前川製作所の重役の方々にインタビューをすることも出来ました。


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

 興味を持った方には、誰にでも読んでもらいたいです。ただ、そのためにちょっとした努力はしています。つまり、論文を書く際は、どんな人にもわかりやすいように、難解な専門用語を極力使わずに書くように心がけています。専門用語を否定する気は毛頭ありませんが、仰々しい専門用語を並べて使えば、ある意味誤魔化しができてしまうのではないかな?と個人的な感想持ってます。で、実際、優れた先生方が書かれた論文ってのはやはり読みやすく書かれていると思いますし...とりあえず、研究者や実務家の目に留まればうれしいのですが、そうじゃなくYahooやGoogle等で検索してたまたま見つけた人たちにも、おもしろく読んでいただけると良いのかなとも考えてます。


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

私の論文は、市販していない雑誌に載っているものが多いので、それを一般の方々の眼にも触れやすいような形で公開してくれるBarrelはとても有難いです。また、電子データとして保存してくれるので、何十年後にも論文が残るというのは大変有意義なことだと思います。私の論文が載っているのは国会図書館にも無いようなマイナーな雑誌ですから・・紙媒体だけだといずれは消えていってしまうものだと思います。Barrelには戦前からの古い紀要論文なども多数登録されていて、それも長く電子化して残すことでいつかは研究対象にされ、日の目を見ることがあるかもしれません。トヨタの歴史を研究する上でも創業者の文書集成等が纏めて残されていたことは貴重なことでした。また、電子化のメリットとしては、コピーしやすいこと、そして後世になって何らかの事情で引き継ぎをせざるを得ない時にも楽でいいですね。冊子だと引き継ぐにしても膨大なスペースが必要ですから。
今後も、古い学術成果を長く残してくれる機関として、Barrelに大いに期待しております。


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前田先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。


先生方のご協力のおかげで正式公開から約2年で登録論文数も3400編を越えました。ありがとうございました。3400編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。