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Barrelの収録文献が平成22年5月13日に3600件を超えました!
3600件目の文献は,企業法学科の片桐由喜先生 による, 片桐由喜 (2007) 韓国社会保障法制の特質と課題 : インフォーマル組織の役割とその限界. 平成17年度~平成18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))(17530042)でした。
片桐先生にお話を伺いました。
Q:登録3600件目の論文「韓国社会保障法制の特質と課題 : インフォーマル組織の役割とその限界」は、どのような内容ですか?
韓国は、社会保障制度はあるのですが、財政的な問題があって、年金にしても生活保護にしても、まだ十分な保障水準に達していない部分があります。本来、国や地方がやらなければならないのに出来ていない部分があり、それを民間団体等が代わりに担っているということについて、その歴史的背景、同団体の果たす役割などについて書いた論文です。 この論文で述べたことのひとつは公的機関、日本でいうと赤十字あるいは共同募金会といった公的な募金機関がたいへん大きな役割を果たしているということです。また、キリスト教が多いですが、宗教団体も信者から多くの寄付を集めていて貧しい人に様々な形態で配分するということをしています。また、大企業の社会貢献活動も同じくらい重大な役割を担っています。それと社会保障における家族の役割も大きいのです。 韓国と日本の社会保障の違いですが、韓国は、国の役割が日本ほどまだ大きくなくて、インフォーマルな組織が、国家のすべき部分を補っているところが日本との大きな違いだと思います。韓国社会においては制度や法律があってもそれを運用する財源に制約があり、まだ子供が仕送りしたり、兄弟が助けたり、あるいは民間団体による現金給付・現物支給が欠くことのできない重要な部分を果たしているということが日本との大きな違いではないでしょうか。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
以前、韓国を旅行した際に、たいへん面白い国という印象を受けました。自分は社会保障法が専門なので、帰国して、社会保障、韓国というキーワードで検索してみたところ、あまりに文献が少ないことに驚きました。 それまでは主にイギリスの社会保障制度について研究してきましたが、先進国ばかりではなくて、これからは日本より社会保障制度が整備途上にある国も研究の対象としてみようと思ったのです。 2000年10月から2002年3月まで、1年半韓国に留学したのですが、その理由としては、日本で勉強しようと思っても、本が全然なくて、しかも韓国の実態が分からないので、ちゃんと自分の目で見て調べてみようと思ったのです。韓国の大学では客員教授として研究したり、施設や病院などを訪問したり、大学院で授業を行うほかに、さまざまな研究会に参加しました。
Q:現在の研究について教えてください。
最近ですと、先週の日本社会保障法学会の大会で虐待法制に関する学会報告がありましたが、私は「近親者からの虐待・暴力における保護と支援」について報告をしましたので、ここのところその周辺についての研究をしていました。 もともとイギリス医療保障制度について研究していますが、今は地域医療制度についても研究しています。韓国については、所得保障制度、つまり年金、生活保護について引き続き研究を続けています。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
社会保障分野や財政学の研究者はもちろんですが、社会保障の公私の役割分担に関心を持っている一般の方にも読んでもらえたらと思います。 本学の「社会保障法」の講義をとっている学生やゼミ生にも読んでほしいと思います。
Q:Barrelについてご意見、感想をお願いします。
大変すばらしい制度だと思います。自分が書いた論文がどのくらい読まれているかをあらわすひとつの指標となっています。研究者としては励みにもなりますし、刺激にもなっています。今後ますます発展していってもらいたいと思います。
--- 片桐先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
先生方のご協力のおかげで正式公開から2年2ヶ月あまりで登録論文数も3600編を越えました。ありがとうございました。3600編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。
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