3800件目記念インタビュー

平成22年12月7日登録件数が3800件を突破しました。!

3800件目の文献は,言語センターの 高井 收先生による,
高井, 收(1995) 外国人にことばを教える. 言語センター広報, 第3号: 95-98
でした。

高井先生にお話を伺いました。

MrTakaiQ:登録3800件目の論文「外国人にことばを教える」は、どのような内容ですか?

大筋としては、外国人に対する外国語としての日本語教育のあり方・教授法について、母国語と外国語の学習環境の違いや、外国語(第2言語)教授理論を参考にして述べたものです。
身についた母国語を基に外国語を習う場合、異なる文法規則・音声・表記法等をどう理解させるか、習う者の母語や学習環境により、教え方が大きな影響を受けることも理解する必要があります。
外国語教授理論については、一つにチョムスキーの提唱した「言語習得装置」としての言語習得モデルがあります。人間は他の動物と違い、生まれつき母国語に近い言語の習得機能があり、成長・経験知識等を通して自己修復・学習機能を発揮されるという考えで、教師は学習者が誤った方向へ行かないよう指導することが重要とされ、いわゆる文法習得に理論的焦点が充てられてきました。近年、クラッシェンが提唱した仮説は、学習者はその言語から与えられた情報を理解する過程を通して言語習得が行われ、文法習得はそれに付随するものであり、学習者の立場になって理解可能な情報を最大限に提供することが望ましいというものです。特に学習者にとって不安材料となる情報を排除し、自信を持たせなければ防御反応が働いて言語運用能力・学習意欲が阻害される恐れがあると。
言語習得には、メンタル面も重要だというのが現代の外国語教授法の理論であり、言語習得に絡む感情要因を説いたクラッシェンへと至る教授法の流れを、この論文ではざっと述べてみました。これをきっかけとしてコミュニカティブが発展してゆく、いわばイントロダクションとして書いたつもりです。
このような教授法の流れを把握したうえで、外国語を教えることがとても重要だと思います。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

大学入学したての頃、1年留学しましたが、あまり上手く話すことができず、日本の英語教育・大学教育への疑問を感じました。解決・上達のためには経験しかないと考え、企業勤めでは無理なので大学院へ入り、アメリカに渡ってどのような教育法が必要かを研究したいと思いました。
文法などを教科書通りに教えるだけではなく、経験と実践に即した言語教育が必要なのでは、と強く思ったことが、言語教育法に興味が向き始めたきっかけと言えるでしょう。


Q:現在の研究について教えてください。

日本文化の発信についてです。外国語を教えるには、まずは自国の文化をよく知り、自分のアイデンティティを打ち立てることが必要だと思います。私は江差追分を歌い、様々な場所で外国人に披露したりすることで、自分とは何か、をよく知り、同時に、日本文化を世界に向けて発信してゆけると思っています。日本人としてのプライドをしっかり持っていないと、外国語をちゃんと教えることも出来ません。現代に最も必要なのは発信型の英語であると思います。異文化コミュニケーションにおいてどのように日本文化を発信してゆくかが、今一番の関心事です。


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。また、Barrelについてご意見,感想をお願いします。

学生をはじめ、出来るだけ多くの方々に読んでもらいたいです。一般の方々に広く読んでもらえることこそが、Barrelの最大の長所でしょう。そのためには研究者たちも、なるべく一般に分かりやすいように論文を書くべきだと思っています。



高井先生、お忙しい中ありがとうございました。先生方のご協力のお陰を持ちまして、Barrelに掲載されたご著作も公開から2年ほどで3800件を超えました。本当に有難うございます。今後もご著作の寄贈を心よりお待ちしております。