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お知らせ

5000件突破!!記念インタビュー 
 
平成29年9月に登録件数が5000件を突破しました!
突破記念として、アントレプレナーシップ専攻の内田 純一先生にインタビューをしました。




Q:先生のご専門の一つは観光学ですね、観光学について教えてください。

A:観光学は、多種多様な学問分野に隣接する学際学です。経済学、政治学、社会学、地理学、理系の分野では情報科学、生物学、環境科学など、様々な学問分野をバックグラウンドとし、それらの学問分野の研究手法を用いて、例えば観光現象や、ツーリズムによる問題解決を図ることなどを対象とする研究群の総称が観光学です。

 
Q:観光学はいつ頃成立した学問なのでしょうか?

A:日本で観光学の名称が四年制大学に正式に登場したのは、1967年の立教大学社会学部観光学科が最初です。もともと立教大学には1946年から寄付講座としてホテル講座がありましたが、今で言う公開講座のようなもので正課ではありませんでした。その後、立教大学は1961年にホテル学科を設置しようとしますが、当時の文部省に申請して却下されました。1964年開催の東京オリンピックを前に、大卒のホテル経営幹部が産業界から求められ、それに応える意図を持った学科だったのですが、学科名に対応する学会がない、つまりホテル学会がないということが却下の大きな原因だったと、後に初代観光学科長となる野田一夫氏は語っています。そこで、1960年代に設立されたばかりであった日本観光学会の名前を拝借し、観光学科として再申請したところ、1967年の学科設置が認められたというわけです。ちなみに私は、後に野田氏が初代学長となる多摩大学に在学していました。

また、1963年には東洋大学短期大学部のなかに観光科が設置されています。こちらも東京オリンピックを見据えて、それまで徒弟制度だったホテル人材の育成を組織的に行うことを狙いとして誕生しています。同短大の観光科は後に四年制の学科として改組され、2017年からは国際観光学部に発展しています。

以上の成り立ちからもわかるように、1960年代の観光学科・観光科が当初目指していたのはホテル経営でした。現在は多くの大学に観光学部や学科がありますが、様々な理由があって、日本ではホテル経営学は主流とならず、様々な学問分野を学際的に包括した現在の状況に落ち着いています。
 
欧米の場合ですと、日本の観光学部とは違い、ホテル経営学が現在でもコア科目となっています。コーネル大学ホテル経営学部は星野リゾートの星野佳路社長が修士課程を修了したことでも知られていますが、現在もホテル経営のトップスクールとして実務家を養成すると同時に、世界中の観光系学部に教員を輩出しています。

ただ、現在ではホテル経営以外のツーリズム・マジメント科目のバラエティを増やすカリキュラム構成をとる大学が多くなっています。例えば、本学と学生交流協定のあるニュージーランドのオタゴ大学経営学部観光学科では、アドベンチャー・ツーリズムやエコツーリズムが盛んなお国柄を反映して、そうした観光形態に関わる地域計画・開発やアクティビティ企画・運営に関するノウハウを提供しています。新たなツーリズムのニーズに応える形で、研究の領域も教育の範囲も拡大しているのが現代の観光学の国際的潮流です。そのため、経営学的なアプローチだけでなく、様々な学問的手法が観光学に持ち込まれているのです。
         
Q:観光学の分野で、先生はどのような研究をされていますか?

A:私の場合は、経営学をベースとして観光を研究しています。

一つは、観光をはじめとしたサービス業は、どのように経営されれば生産性が向上し、イノベーションを起こせるのか、といったことについての研究です。私がアントレプレナーシップ専攻で担当するのは「サービスマネジメント」という科目ですが、観光産業だけでなく、サービス産業全般のビジネスモデルが研究対象になります。

もう一つは、観光まちづくりについての研究です。観光を通じて地域の問題を解決するということが最近増えてきています。例えば、産業の全くない地域が観光客を誘致することによって、経済的な活性化を図るといったことですね。まちづくりが停滞していたような地域に、観光客が来ることによって、お金の流れができたり、雇用が生まれたりして、復活の糸口をつかむことがあるんですよね。そのように、まちづくりをどうマネジメントすべきかというのを、経営学にとどまらず行政学や社会学の分析手法なども使いながら研究しています。

そういった研究は一人ではできないので、色々な分野の研究者との共同作業で進めています。
 
Q: お話しを伺うと、観光学はあらゆる分野を内包した学問のような印象を受けました。それで研究手法も様々な分野の手法を取り入れているのでしょうか?

A:観光学には、独自の学問的手法と言えるものは無いんです。経営学をはじめ、先行する様々な学問分野から持ってきたものが多いんですね。また、別の学問を専攻する研究者が、観光学の学会に学問的な垣根を意識せずに参入することも増えています。そういう意味でも観光学は独自の研究手法を持たない領域科学と言えると思います。観光学だけで成立はできないし、まだそういう現状にもないということですね。

もう一つは、観光学が対象にしている問題、関心が、時代によってどんどん変わっていくことにも関係しているかもしれません。今まで観光学に興味がなかった人たちも、オリンピック開催効果による外国人観光客の増加などで、観光がもたらす現象が自分と無関係ではなくなると、問題解決のためには観光学の分野に関わらざるを得ないということがどんどん出てきますよね。

小樽商大の卒業生のうち、いわゆる観光産業に進む人はそう多くはないと思いますが、どんな仕事に就こうと、観光という現象に仕事上で向き合うことは決して少なくないはずです。そして、その傾向はますます強くなって社会のあらゆる分野に拡大していっています。

Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか?

最も読んでもらいたいのは受験生の方々ですね。

まず大学院受験の場合を想定してみましょう。
例えば研究者養成型の大学院を受験するときには、目指す大学院に指導を受けられる教員がいなければ、ミスマッチを起こしてしまいますよね。それを避けるためには教員がどんなことを書いているのかをチェックすることが重要で、Barrel等の機関リポジトリは最もアクセスが容易な媒体だと言えます。
機関リポジトリがない頃は、該当教員が出版した本の内容を読むか、その教員が寄稿した学会誌が(自分の利用できる)図書館に運良く備えてあれば読むことができるかも、という状態で、今よりも圧倒的に情報不足でした。その頃(私が大学院受験した頃)に比べたら、とても便利な時代になったものです。

ところで、大学院を受験する人がいくら優秀であっても、所属教員とミスマッチだったら一昔前なら不合格になっていたものですが、近年はどこの大学院でも、大学院重点化やら文科省や大学当局からの定員充足の圧力などで、ミスマッチだろうと合格させてしまうことが多くなっています。大学院側にも落とせない台所事情があるんですね。

でも、ミスマッチだと自分の希望する教育指導は受けられないわけですし、博士課程ともなると肝心の修了が難しくなってきます。
修士課程では修了できないということまではいかないかもしれませんが、受験生の期待と実際の教育環境が違うという事態は、教員・学生ともに不幸というものです。

大学院で研究者コースを受験するレベルなら、その大学院に所属している教員が書いてきた論文やら解説文、専門記事等を参考にすれば、教員の専門分野の概略がわかるはずです。パンフレットに並んだ開講科目名だけではわからない、その大学院の教授陣の深い専門分野がわかれば、誰と誰が自分の修士論文・博士論文の主査と副査になってくれるだろうかと、あらかじめ予想がたてられます。逆に言えば、自分の書こうとしている論文の内容をこの大学院ではきちんと審査してもらえるかな、と心配になるようだったら再考したほうがいいでしょう。
学部のゼミでしっかり担当教員から受験指導も受けている人には、今更言うまでもないことなのですが、近年は一度社会人になって数年を経てから(私もそうでしたが)大学院を目指すケースも多いので、そうした方々にはぜひBarrelをもっと活用してほしいですね。

次に学部学生の場合も想定してみます。
私は、前職の北大時代も小樽商大に移籍してからも、道内の高校で出前講義や模擬講義を担当させてもらったことがあります。
受験生候補である高校生たちに、大学の講義をわかりやすく伝え、大学選びや学部・学科選びの参考にしてもらうためなのですが、高校生たちの側に立つと、運良く自分の関心のある講義内容が出前してくれる場合ばかりとは限りませんよね。私の方も、模擬講義をするときには、自分の専門分野だけでなく、なるべく所属する組織が網羅する専門の広がりを伝えようと努力しますが、時間的な制約もあるし、私の能力にも限界があってなかなか難しいものです。

Barrelに掲載されている記事は、高校生には読解が難しい専門的論文が割合的には多いわけですが、一般向けの記事もけっこう掲載されているので、そうしたものをうまく活用すれば、大学選び、学部・学科選びの助けになるはずなのです。

例えば、私が北大在籍時に高校生向けに書いた記事(北大の機関リポジトリHUSCAPに所収*)のような、極力分かりやすい言葉で書いた文献が、Barrelにもたくさんあるはずです。
国・都市・地域の魅力を創るブランディングの力

そうすると、大学図書館の側で、教員たちが執筆した一般向けの記事だけを集めて、大学学部・学科パンフレットの補助役・ガイド役として「まとめサイト」的にうまく編集すれば、高校生にアピールするものがあるかもしれませんね。
最近の高校生はネットから情報を集めるのがうまいので、Web上で特集ページを創るだけでなく、SNSでチャンネル化したり、高校生にリーチするようなコンテンツとセットにしてBarrelへ誘導するのも有効だと思います。

Q:Barrelについてご意見、感想があればお願いいたします。
実は、この「記念インタビュー」のコーナーが、Barrelで私が最も好きな部分です。

研究論文でしか知らない研究者たちが、執筆時の苦労話や、普段の研究生活の裏話を語っていたら、きっと新鮮な感じがするはずです。
たとえて言うなら、めったにマスコミに登場しない小説家が書く「あとがき」って、その小説家の人となりを知るのには大変貴重なものですよね。
研究者の素の顔がチラリとのぞくこのインタビューは、そんな位置づけなのだと思います。

私も今回、インタビュー先に選んでもらえて大変光栄です。
どうか、今後も定期的にこの「記念インタビュー」を続けてください。今後も楽しみにしています。

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内田 純一先生のBarrel公開論文はこちらです!(2017.10.17現在)

Strategies for Regional Innovation: A Branding Approach

デスティネーション戦略は連携の<役割>視点で考えよ

北海道企業に求められるサービスマネジメント

アイデンティティで問い直すOTARU PRIDE

地方からのサービス・イノベーション創出 観光クラスターをめざす地域資源ベース戦略

風評被害に立ち向かう「広報力」


内田先生、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
受験生の皆さまも含めた様々な方々に利用していただけるよう今後も努めて参ります。
また、記念インタビューにも注目してくださり、ありがとうございます。これからも研究者の皆さまの素顔をご紹介していきます!