Barrelの収録文献が平成20年1月22日に100件を超えました!
100件目の文献は,経済学科の今西一先生による,
今西, 一 (1995) 民衆運動のなかの「暴力」『近世思想史研究の現在』: 思文閣出版 , pp425-443
でした。
今西先生にお話を伺いました。
Q:登録100件目の論文「民衆運動のなかの「暴力」」は,どのような内容ですか?
私が専門としている民衆史は,60年代に色川大吉氏や安丸良夫氏によって提唱されたもので,70年代の大学紛争,既成の学問に対する批判の風潮とあいまって流行した。それまで歴史で描かれてこなかった一人一人の民衆にスポットを当てるものである。しかし,私はその民衆史が,民衆を美化し,暴力,性,戦争といった否定的な側面を叙述していないという点に疑問があった。そこで,この論文では民衆運動の中の暴力について取り上げた。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
そもそも,社会的弱者の問題に関心がある。例えば,私の専門である近世,近代の日本では,7割が読み書きできない人であった。文字のない世界の中で生きた人々を知るためには,文字だけでなく絵画や音楽などありとあらゆる方法を用いる必要がある。1つの方法論で物事を捉えるのは限界がある。対象を明らかにできるのであれば方法論は何でも使わないと,というのが持論だ。「解体派」と言われるが,マージナルな民衆史かもしれない。
Q:現在の研究について教えてください。
昨年は女性史,遊女の歴史を研究していたが,現在は瞽女(ごぜ:盲目の女性旅芸人),座頭(ざとう:盲人の位)など身体障害者の歴史を研究している。耳だけで世界を作る人たちの歴史ともいえる。私は経済学科に籍を置いているが,「経済」は「経世済民」と言って,民をどう救済するかという学問である。economyも本来の意味は,政治学に近い。例えば,現代においても「暴力」は問題となっているが,暴力がなぜ起こるのか,少なくするにはどうしたらよいかという問題意識を持って研究することが大切だと思う。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
まず,海外の人,遠隔地の人に読んでもらいたい。学生にも読んでもらいたい。私は韓国に2度留学したが,遠隔地であったため文献の入手に大変苦労し,インターネットで公開されていた文献のおかげで大変助かった。また,自分が若い頃はコピー代が高くて,本を一冊手で写したこともある。(カレーライスが50円でコピー1枚が30円だった。)今の学生は情報入手が楽になったと思うが,もっと簡単に手に入るようにしておきたい。インターネットに頼りすぎる,情報がありすぎるという心配はあるが,いくら情報があっても理解する能力,モノを考えていく力がなければ意味がない。教育の意味はそこにあると思う。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
簡単に論文を手に入れることができるということはとても重要なことだ。書物や文献がインターネットで公開されることがもっと進んでほしいと思う。正直に言うと,最初,Barrelの話を聞いたときは,本が売れないこの時代にどうかなとちょっと思ったが,遠隔地にいても貧しくても論文を読めるという「知識の平等性」が保障されてほしいと思うし,それに貢献すると思う。それから,Barrelは文献の整理という意味でありがたい。大量の資料の中で研究しており,自分の文献がどこにあるか分からないことがあるので。
興味を持った方へ!...今西先生からのオススメ入門書
青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月4日に追記しました。
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今西先生,お忙しい中,貴重なお話をありがとうございました!
先生方のご協力のおかげで開始から2ヶ月あまりで100件に達しました。ありがとうございました。100編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。