300件目記念インタビュー

Barrelの収録文献が平成20年4月11日に300件を超えました!

300件目の文献は,言語センターの鈴木将史先生による,
鈴木, 将史 (2004) ヴィルヘルム・ベルシェとゲルハルト・ハウプトマン『独語独文学研究年報』31 , pp145-161
でした。

鈴木先生にお話を伺いました。

Suzuki senseiQ:登録300件目の論文「ヴィルヘルム・ベルシェとゲルハルト・ハウプトマン」は,どのような内容ですか?

 1912年にノーベル賞を受賞し、大統領候補にもなったドイツの高名な劇作家である「ゲルハルト・ハウプトマン」と、同時代のドイツで科学的な啓蒙書を発表していた作家の「ヴィルヘルム・ベルシェ」の、生涯を通じての友好関係について述べたものです。両者は、作家同士の関係においては極めて珍しいことに、ごく若いころから八十代で亡くなるまで良好な友人関係を保ちました。そのことを文学的に論ずるのではなく、あくまで素朴な人間関係として描きたかったのです。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

 2003年から2004年にかけてベルリンに滞在して在外研究をするにあたり、ハウプトマンの広い交友関係について研究しようと思いました。その中でも、ヴィルヘルム・ベルシェは、先行の研究書にはあまり取り上げられていなかったので、スポットをあててみようと決めました。ハウプトマン作品とは大学時代に出会い、緊張性を保ったナチスとの関係、そしてハウプトマンの人間的魅力に惹かれ、研究を続けてきました。


Q:現在の研究について教えてください。

 1913年に発表されたハウプトマンの「ドイツ韻律による祝典劇」を研究しようとしています。1913年はちょうど、ドイツがナポレオンの支配から脱したライプチヒの戦いから100周年で、ドイツに国を挙げての愛国運動が高まった年でした。その祝典のために上演されたこの劇は、ナポレオンへの敵視、及び当時のドイツ皇帝への賛美が足りないと指摘され、また、文学的すぎて祝祭気分に欠けるものだったためブーイングの嵐を起こし、大失敗に終わってしまったのです。これまでほとんど研究されていなかったドイツ祝典劇の研究には4年ほど前から取り掛かったのですが、研究するにつれて、かなり遠大な歴史を持っていることがわかりました。王やその時代の支配者、貴族を礼賛するために創作された中世から、愛国心高揚のために利用された近代まで・・・その歴史をひもとくと共に、ドイツ国民の精神的モニュメントとしての「祝典劇」と物質的モニュメントとしての「記念碑」の対比などをおこないながら、今後3~4年かけて研究してゆこうと思っています。 


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

 論文を書いているときは、研究者に読んでもらいたいという思いが強く、一般に広く配信されることは想定していません。しかし、Barrelに掲載されるとなると、誰でも読める訳ですから、いいかげんなことは書けなくなる。ある程度読者を想定しなければならないので、書く方の姿勢が大いに変わってくることは間違いないでしょうね。


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

 先ほども述べたのですが、Barrelに公開されるようになると読者を意識して、書く方の姿勢に変化が生じることでしょう。独善的な論文は減るかもしれません(笑) 理系の分野ではネットによって迅速に最新の情報を手に入れられることが最大のメリットとなりますが、文系では蓄積された古い資料にあたることが重要なので、Barrelも、古いものをいかに遡及して載せられるかが問題でしょう。また、最近の学生の傾向として、インターネットだけで情報を集めて論文を書くことが増えているので、Barrelのように便利なものの発達によってその傾向が助長されることが危惧されます。インターネットの発達によって資料の収集が容易になり、論文は書きやすくなりますが、その分、内容の薄い論文になり、質の向上は保障されなくなるでしょう。よって、あくまでネット上の情報は研究の糸口としてとらえ、あとは自分自身で古い文献にあたるのが良いと思います。また、ネット上の情報は盗作を容易にする(すぐにコピペできるので)という点でも問題があるでしょう。


recom. books  興味を持った方へ!...鈴木先生からのオススメ入門書

エバーハルト・ヒルシャー 『文学的世界像-七人のドイツの作家たち-』エディションq, 1999

ゲルハルト・ポール 『私はまだ家にいるのか-ゲルハルト・ハウプトマンの最期-』鳥影社, 1999 


青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月4日に追記しました。

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鈴木先生、お忙しいなか、貴重なお話ありがとうございました。
鈴木先生は大学の広報を担当しておられ、写真の後ろに貼ってある「商大くんキャラクター」も応援しておられます。また、先生のゲルハルト・ハウプトマンについての他の論文をBarrelから読むことができますので、どうぞご覧ください。
ハウプトマンとマンの関係を探る
Language Studies : 言語センター広報, 6: 67-71 (1998-03)



先生方のご協力のおかげで正式公開から1ヶ月あまりで300件に達しました。ありがとうございました。300編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。