1800件目記念インタビュー

Barrelの収録文献が平成21年2月24日に1800件を超えました!

1800件目の文献は,経済学科ーの角野浩先生による,
角野, 浩 (1992) 財産税帰着の一般均衡分析 : 都市部門に失業がある場合, オイコノミカ, 28(3/4): 31-51でした。

角野先生にお話を伺いました。

MrSuminoQ:登録1800件目の論文「財産税帰着の一般均衡分析 : 都市部門に失業がある場合」は、どのような内容ですか?

 大学院を出て助手になった頃に書いた論文です。バブルがはじけ急に景気が悪くなって失業者が増えたときの経済のモデルについて興味を持ちました。失業者への対策として、失業手当を給付すると改善されるのか、また、国の公共政策はどうあるべきか考えてみたかったのです。現在の研究のまさに出発点の論文です。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

「不況をテーマに扱ってみたいな、面白そうだな」と漠然と思っていました。そんなとき、"Journal of Public Economics" に掲載された "Corporate income tax incidence in the presence of sector-specific unemployment" というMiyagiwa[1988]論文を見つけ、さらに研究を進めたいと思いました。
学生にも言っているのですが、「やりたいこと」と「できること」は違うんですよね。やりたいと思っても、データや、自分自身に技術がなければ難しい。このときは、このモデルだったら自分でも検討してやれるのではないかと思えるものでした。


Q:現在の研究について教えてください。

 そういった意味で、共同研究はお互いの技術を補え、さらなる研究が行えます。この論文を発展させて、研究を続け発表した論文が2本あります。
 1つは、神戸大学の入谷先生との共同研究で、2001年、『商学討究』51巻4号に、"On the Existence of Unemployment Equilibria under Wage Rigidity" を発表しました。
 もう1本は、1997年から2年間イリノイ大学に在外研究に行ったのですが、そこで共同研究したラシッド先生との共著で、"Economics of Unemployment"という本に掲載された"Counter-Intuitive Effects of Unemployment Benefits: Balanced - Budget Incidence."という論文です。ラシッド先生は、バングラディッシュご出身で、都市と農村の経済の格差のことについて常に考えてらっしゃる先生で、失業手当を与えることが失業率を減らす影響を与えるということを扱った私の論文に興味を持ってくれて一緒に研究をはじめました。
 現在は更に、環境問題をテーマに取り込み、二重配当仮説の研究を行っています。例えば、去年、ガソリンが高くなったら多くの人が車に乗らなくなりましたよね。「環境税」といった新たな税金を設定しなくても、環境によくないものに高い税金をかけることで環境もよくなるのではないか、一方で、その税金の使い途をはっきりとさせ、例えば環境問題や、不況であれば失業の給付や所得税の減税にあてることができれば、これは一石二鳥ではないかというアイデアです。
 環境問題を外部性の観点から捉えた研究については、筑波大学の篠塚先生と共同研究を行っています。"A note on optimal taxation in the presence of externalities"という共著論文がCBCのディスカッション・ペーパーとして、Barrelでも公開されています。


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

 いろいろな人に読んでもらいたいですが、特に卒論を書く4年生の学生に、Barrelで自分の論文に限らず他の先生の論文を読んで、参考文献の記載の仕方、脚注のつけ方、タイトルのつけ方、セクション、サブセクションのつけ方などを見て、論文の書き方を学んでほしいです。卒論といえども論文ですので、形式が整っている論文を書いてほしいです


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

 この論文を書いた頃は、図書館で一つ一つ地道に論文を探してコピーしては読んでいました。研究は論文を読まないと始まらないですから。今は、インターネットで論文が検索できるので、格段に便利になりました。
 自分の論文をいちいちコピーして学生に渡すのは大変なので、Barrelを指定して読むよう指導する、という使い方もできますね。ぜひ、積極的に利用していただきたいと思います。

recom. books  興味を持った方へ!...角野先生からのオススメ入門書

(1)「財政学」の内容が中心で、「公共経済学」の分野もカバーし、「二重配当仮説」等の「環境政策」を扱った入門書です。
角野浩著 『財政学』 同友館, 2007

(2)財政データや財政の仕組みを調べるための参考文献です。
山口公生編 『図説日本の財政(各年度版)』 東洋経済新報社 
増原義剛編 『図説日本の税制(各年度版)』 財経詳報社 

(3)「経済学」の入門書、「失業」、「国際経済」等の内容をカバーした入門書です。
篠原総一, 野間敏克, 入谷純著 『初歩から学ぶ経済入門 : 経済学の考え方』 有斐閣, 1999  

青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月18日に追記しました。

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角野先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。


先生方のご協力のおかげで正式公開から1年足らずで登録論文数も1800編を越えました。ありがとうございました。1800編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。