1900件目記念インタビュー

Barrelの収録文献が平成21年2月27日に1900件を超えました!

1900件目の文献は,本学監事の土橋信男先生による,
土橋, 信男 (2008-05-15)「学長のリーダーシップが最良の大学教育を実現」Between, 225: 12-13でした。

土橋先生にお話を伺いました。

MrDobasgiQ:登録1900件目のご著作「学長のリーダーシップが最良の大学教育を実現」は、どのような内容ですか?

 元来日本の大学は「入難出易」とされ、入学後の資質はあまり問われませんでした。しかし、大学全入時代を迎えて大学生のレベル低下が顕著化し、「大卒の資格は何の意味も持っていない」という厳しい批判が産業界などから相次いでいることから、中央教育審議会が2008年3月に「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」という中間報告書を出し、大学生が卒業までに最低限身につけなければいけない力を「学士力」と定義しました。学士力には、「知識(異文化の理解、社会情勢や自然・文化への理解等)」、「技能(コミュニケーション能力、情報活用力、論理的思考力等)」、「態度(チームワーク・リーダーシップ、倫理観、生涯学習力等)」、「創造的思考力」の4分野(全13項目)が取り上げられており、学士力をつけるために、大学は、3つのポリシーを明確にし、その方針を連携させることが重要だと述べられています。
 3つのポリシーというのは、「アドミッション・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」で、大学教育の「入口」と「中身」と「出口」についての方針です。とても大切なことで、私としては、これらを実践するためには従来型教授会的な慣行による運営ではなく、大学全体が一致協力して取り組み、有機的に統合した教学経営を行う必要があると考えました。そのためには、学長のリーダーシップが不可欠であるという旨を論じたものです。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

 1969年から5年半、シラキュース大学で高等教育行政学を学び博士号を取得しました。渡米した日は7月24日、ちょうどアポロが月から戻ってきた日でした。大学に在学中から、大学のあり方に興味があったのですが、当時、日本の大学では高等教育について学べなかった。それで留学しました。このことが、今の仕事や興味と結びついています。
 高等教育についての研究は、広島大学が最も早く取り組み始め、12年前にやっと学会もでき、多くの報告書等が刊行されています。


Q:現在の関心について教えてください。

 今は、学士力をつける大学の力、大学の教育力について、興味を持っています。大学教育力は何か? 重要な要素は何か? 一番難しいところです。
 他大学で授業を持っているので、学生に、学士力をつけるのに影響力が大きいのは何かについてアンケートをしてみました。すると、「教員・授業」と答えたのは4割に止まり、「仲間」が3割、「職員」が1割、「その他大学全体」が2割でした。「職員」も意外と重要なファクターなんですね。
 桜美林大学では現職の大学職員のためにアドミニストレーターを養成する通信制の大学院を開講していますよ。


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

 この文献ということであれば、教員、職員に限らず、大学関係者に読んでもらいたいです。Barrelは新しい図書館のカタチですね。


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

 すばらしい企画だと思います。感心しました。社会に出て行って何かする社会貢献もありますが、知的貢献というのかな、知の社会貢献として、意味のあるプログラムだと思います。学術情報の流通を促進する側面も画期的だけれど、大学の発信力としても、Barrelは大きく貢献していますね。


recom. books  興味を持った方へ!...土橋先生からのオススメ入門書


天野郁夫著『大学改革 : 秩序の崩壊と再編』東京大学出版会,2004

天野郁夫著『帝国大学の時代(中公新書 2004 . 大学の誕生 ; 上)』中央公論新社,2009 

天野郁夫著『大学への挑戦 (中公新書 2005 . 大学の誕生 ; 下)』中央公論新社, 2009 

市川昭午著『未来形の大学(高等教育シリーズ ; 106)』玉川大学出版部, 2001

潮木守一著『転換期を読み解く : 潮木守一時評・書評集』東信堂, 2009

岡部光明著『私の大学教育論 : 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでの実践』慶應義塾大学出版会,2006

喜多村和之著『大学は生まれ変われるか : 国際化する大学評価のなかで (中公新書 ; 1631)』中央公論新社, 2003

絹川正吉著『大学教育の本質』ユーリーグ, 1995 

絹川正吉著『大学教育の思想 : 学士課程教育のデザイン』東信堂, 2006 

草原克豪著『日本の大学制度 : 歴史と展望』弘文堂,2008

小宮山宏著『東大のこと, 教えます : 総長自ら語る!教育, 経営, 日本の未来--「課題解決一問一答」』プレジデント社, 2007

中嶋嶺雄著『21世紀の大学 : 開かれた知の拠点へ』論創社, 2004

読売新聞教育取材班著『大学の実力 (教育ルネサンス)』中央公論新社, 2009


青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2010年2月3日に追記しました。
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土橋先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。


先生方のご協力のおかげで正式公開から1年足らずで登録論文数が1900編を超えました。ありがとうございました。1900編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。