Barrelの収録文献が平成24年11月27日に4400件を超えました!
4400件目の文献は,杉村泰教先生による,
Sugimura, Yasunori (2002) A Reconsideration of Oa the Earth Goddess in William Golding's "The Inheritors". The Modern Language Review, 97(2):279-289でした。
杉村先生にお話を伺いました。
Q:登録4400件目の論文「A Reconsideration of Oa the Earth Goddess in William Golding's "The Inheritors"」は、どのような内容ですか?
英国の20世紀の小説家ウィリアム・ゴールディング (William Golding, 1911-93) の代表作の一つ『後継者たち』(The Inheritors, 1955) は、Oaという名前の大地女神を信仰し、自然を崇め、死者を敬い、家族の絆を大切にして生活しているネアンデルタール人が、知略に長けたクロマニョン人の攻撃を受けて、自然が破壊される中で絶滅してゆく過程をフィクションとして描いたものです。一見、人類学的な装いを纏いながらも、この小説は実は、これら太古の人類の生活様式の中に、現代の人間が直面する様々な問題の原点が見出されるような巧妙な仕組みを備えています。この意味で作者は、現代人に共通する問題意識を掘り下げて描いていると考えられます。これらの点を踏まえて、私はこの拙論の中で、ネアンデルタール人が心の拠り所としている大地女神Oaを、文化、 宗教、精神分析学、記号学などの側面から分析して、その重要性を指摘しました。
Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
ウィリアム・ゴールディングの最も有名な小説『蠅の王』(Lord of the Flies, 1954) が、日本でも一時期、多くの人々に読まれたことなどが、この作家に興味を持つきっかけとなりました。特にゴールディングが1983年にノーベル文学賞を受賞した時から、ほぼ全ての作品にわたって研究を開始しました。『後継者たち』は、作者本人も気に入っている小説なので、私も大いに興味があります。
Q:現在の研究について教えてください。
ゴールディングの作品には、自然の驚異、自然に対する畏怖、自然保護の重要性などが描かれています。現在、私は、ゴールディングを含めて自然環境に関心を示した作家、とりわけロマン派詩人ワーズワースや19世紀の小説家で詩人トマス・ハーディ等を中心に英文学全般と自然環境との関係を研究しています。
Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。
日本の学生や研究者だけではなく、海外の研究者にも幅広く読んでもらいたいと思っています。
Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。
Barrelは、極めて価値のあるデータベースだと思います。執筆した論文を直ちに海外に発信するという点で、大いに研究の励みになります。ダウンロードの回数をそのつど通知していただけるので、自分の論文の評価に役立ちます。
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杉村先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
先生方のご協力のおかげで登録論文数も4400編を越えました。ありがとうございました。4400編は先生方の御著作のほんの一部でしかありませんので,これからも先生方の研究成果の公開につとめていきたいと思っております。今後とも,ご著作をより多くの人々へ届けるため,論文等をBarrelへ寄贈いただきたくよろしくお願いいたします。