2300件目記念インタビュー

Barrelの収録文献が平成21年6月15日に2300件を超えました!

2300件目の文献は,経済学科の平井進先生による,
平井, 進 (2009) 「ヨーロッパ農村社会史研究と共同体再考」. 近世村落社会の共同性を再考する : 日本・西欧・アジアにおける村落社会の源を求めて(年報村落社会研究 第44集) : p.37-71でした。

平井先生にお話を伺いました。

MrHiraiQ:登録2300件目の論文「ヨーロッパ農村社会史研究と共同体再考」は、どのような内容ですか?

大筋としては、近代以前のヨーロッパ農村の地域組織について述べたものです。
近代以前のヨーロッパ農村史の理解においては戦後長らく故大塚久雄氏の『共同体の基礎理論』が事実上通説扱いされてきましたが、その像があまり正確ではないことを主張したかったのです。つまり、『共同体の基礎理論』はヨーロッパの一部にしかない共同体の特質を一般化して全体像としたのですが、私はそこに問題があると考えました。この論文によって、広く定着してしまった通説を覆したかった、と言えるでしょうね。


Q:この研究をはじめられたきっかけは何ですか?

直接のきっかけとしては、2年前の日本村落研究学会の大会で、私が属する共同研究のグループが報告することになり、そのために始めました。この学会は、複数の国の農村史の比較も対象としており、今回の論文が載った『年報村落社会研究』(第44集)も、日本、西欧、アジアにおける近世農村社会について多方面から分析しています。


Q:現在の研究について教えてください。

ドイツの近世・近代史には大学時代からずっと興味があり、現在も引き続いてドイツの近世・近代における、主に農村の歴史を研究しています。そもそもは、大学の指導教官がドイツ史専門だった、というのが理由といえるかもしれませんが(笑)
しかし、ドイツ史以外、例えば日本史などにも大変興味があります。本学の日本史の先生から著書をたくさんもらって読ませていただいたりしているのですよ(笑)


Q:Barrelに掲載された文献をどのような人に読んでもらいたいですか。

専門的に隣接している分野の方々に読んでもらいたいです。つまり、ヨーロッパ史の中でも農村史ではない分野の研究者の方たちや農村史をあまり知らないような社会経済史関係の方たちにも読んでもらいたいですね。そうでないと、いつまでも通説が訂正されないと思うので。この分野は、学生からはあまり興味を持たれないでしょうが、通説を覆すという点で役に立つものになってゆけたらと願っています。


Q:Barrelについてご意見,感想をお願いします。

どこに行ってもすぐに論文を見られるのでとても便利だと思います。現在、学会誌で発表した論文は学会のデータベースで見られることが少なくないのですが、Barrelはそれがカバーしきれない分を補強し、研究の役に立ってくれる存在となって欲しいですね!
小樽商大にかつて在籍した有名な研究者の、在籍時の論文を掲載するのもBarrelの宣伝に役立つのではないでしょうか。


recom. books  興味を持った方へ!...平井先生からのオススメ入門書

レーゼナー『農民のヨーロッパ』平凡社, 1995

酒井洲二『年貢を納めていた人々』法政大学出版会, 1995

ミッテラウアー『ヨーロッパ家族社会史』名古屋大学出版会, 1993 


青字は本学図書館で所蔵しています。リンクをクリックしてご確認ください。※この推薦本は、2009年9月4日に追記しました。

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平井先生、お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。